石原愼悟 2003年入社
同じ建設業に携わる父の影響もあり、設備業界を志す。機械工学部を卒業後、業界No.1の規模の大きさに魅力を感じ、高砂熱学工業に入社。主に工場など産業系案件の施工管理に携わり、各地の現場を経験する。現在は多摩営業所にて、メーカー製造工場の案件で現場所長を務めている。
現場所長は、施工現場の代表。そこで起こりうることをすべて想定し、起きたことすべてに対処しなければいけません。しかし、現場では想定通りに物事が運ぶことの方が少ない。たとえば、ある現場では図面通りに、天井から空調機器を吊り下げる予定でした。ところが実際に機器を運び込んでみると、スペースが30cmも足りないということがありました。古い建物の改修工事だったので、当時の手書きの竣工図と、改修工事の施工図で大きく違うところがあったのです。持ち込んだ機器が設置できないとなると、新たな機器を手配することも考えなければいけませんし、工期全体のスケジュールにも影響が出る可能性がある。自分たちが請け負う設備機器の工事が遅れることになれば、建築工事の進捗にも大きな影響が出てしまいます。そこで、作業を行う方の負担にならない範囲で工期を短縮できるよう工程を組み直したり、建築会社の担当者と協議を重ね納期を調整したりと、関係者の総意をまとめあげ、全員で完成を目指します。大きな案件になればなるほどプレッシャーも大きく、「果たして無事に終わるんだろうか」と不安になることもありますが、一方で、なんとかならないことは今までなかった。経験が、仕事に自信を与えてくれているのだと思います。
私は工場などの産業プラントの案件に関わることが多いですが、もっとも印象的だったのは、秋田県にある製薬工場ですね。そこで製造される医薬品には、人体にとって有害な物質が含まれることもあります。そこで、危険な物質が絶対に外に漏れることのないよう、室圧を制御し、空気が逆流しないよう陰圧の状態をつくる必要があるのです。しかし、工場の入り口から製造ラインに至るまでには、保護服に着替えるスペースやエアシャワーなどの小部屋がたくさんあります。その扉を開閉するたびに空気が逆流しては、有害物質が漏れ出てしまう。そこで、室圧を扉ごとに段階的にコントロールして、空気の流れを遮断できるよう、天井から送風する機器を設置しました。しかし、大変なのは送風のタイミングです。設計時の数値データはあるものの、実際に現場で扉の開閉と機器の作動を合わせようとすると誤差が生じてくる。試運転の時間も少なく、一日の作業が終わった後にタイミングを調整、何度もトライ&エラーを繰り返したのです。そして、やっと理想のタイミングで機器が作動した時には、とにかく、「ほっとした」の一言。その後に実際に稼働した製造ラインを見た時は、あらためて感動しました。設備の仕事というのは、理想通り動いてからこそ価値がわかるもの。実際に使われている工場を見て、自分の努力が形になった、と大きな達成感を覚えた瞬間でした。
現場所長としての仕事は、施工現場で設備を形にする面白さがある一方、当社の技術を使って、どんな課題解決ができるかをお客様に提案する喜びもあります。お客様の設備を実際に目にして、運用方法や課題、ご要望を聞き出して、改善案を形にしていきます。さらに、具体的にどんな機器を設置すれば、より効率的な運用が可能か。新たな技術を導入すれば、何%の省エネ効果があるかなどデータを提供して、営業とともに契約への道筋をつくっていくのも私の仕事です。
こうした案件では、工事が完成して得られる達成感とはまた異なる喜びがありますよね。施工管理として若手の頃には、まさにモノを作り出す喜びがあり、キャリアを積んでからは、これまでの経験を活かして高い視点から提案ができる。自分の成長のステップに応じて、いろいろな喜びが得られるのも、高砂熱学工業の施工管理ならではなのかもしれません。お客様がしっかりと納得していただいた上で受注をいただいた時は、工事が完成した時とはまた違った喜びがありますね。これまでの知識や経験、アイデアを駆使して、ご要望に全力で答えていく。そんな喜びもこの仕事にはあるのです。