2-1 創立
高砂煖房工事株式会社創立
高砂熱学工業株式会社は、大正12年(1923年)11月16日、高砂煖房工事株式会社として創立。創立者は、当時有数の銀行家で高砂企業グループの総帥であった原 邦造。事務所は東京市京橋(現・中央区八重洲)に。その後、昭和18年(1943年)に社名を現在の高砂熱学工業㈱に改めました。前身はマッチの原料、塩素酸カリの製造を目的に創立した高砂工業㈱で、大正8年(1919年)に合併した㈱高砂鉄工所の暖房放熱器製造が当社事業の起源となりました。
2-2 初代社長柳町政之助著、2012年建築設備技術遺産に認定
「煖房と換気(前・後編)」発刊
初代社長柳町政之助は、大正9年(1920年)12月に当時の最新理論と技術を解説した『煖房と換気』(前編)を、大正11年(1922年)5月に後編を著作しました。
後に、2012年、わが国初の空調技術専門書『煖房と換気』が「建築設備技術遺産」に認定されました。
2-3 わが国初の完全冷暖房劇場
三越ホール(現:三越劇場)
1927年竣工、わが国初の完全冷暖房劇場として話題を集めた三越ホール(現:三越劇場)。当時の衛生工業協会誌に次のように紹介されました。「近時換気科学の進歩は人力を以て気候を征服し得るの域に達し…心地よき微風さへも生ぜしめ…人をして室内に入るや先づ場内空気状態の触感に陶酔せしむることを得るに至れり」。
2-4
国産第1号、
2010年機械遺産に認定
高砂荏原式ターボ冷凍機
高砂荏原式ターボ冷凍機の1・2号機は、1931年に大阪市北区中之島の朝日ビルに設置されました。同ビルは、国産ターボ冷凍機の設置だけでなく、全館空調,温湿度制御、遠隔制御等当時の最新技術を駆使し、当社が総力を結集した画期的な施設でした。
後に、2010年、当社の総合研究所に保存されていた高砂荏原式ターボ冷凍機が、現存する国産第一号ターボ冷凍機として「機械遺産」に認定されました。
2-5 日本初
シロッコ型送風機開発
エロフィンヒーター(温湿度調整装置の加熱器に用いるヒーター)やエアワッシャー(空気洗浄器)などの冷暖房機の部品や温湿度調整に欠かせない装置を相次ぎ開発した。そのうちの一つが「シロッコ型送風機」です。
2-6 わが国ヒートポンプ第1号
ヒートポンプ式冷暖房装置開発
「冷凍機を暖房に利用する」という原理は、19世紀に欧米で発見されていました。わが国では1926年6月に大塚要京都帝国大学教授が体系化して発表。これに興味を持った当社の技術者柳町は1929年に渡米、この原理実現の可能性について確信を得ます。帰国後に試験を重ね、1932年末、兵庫県武庫郡御影町(現・神戸市東灘区御影町)の村山長睾氏(元朝日新聞社社主)邸に、わが国最初のヒートポンプによる冷暖房設備を完成させました。
2-7 国産工業用第1号
国産工業用冷却塔
昭和13年(1938年)に日本水素工業㈱(後に日本化成㈱)の小名浜工場の炭酸ガス放散装置として、わが国最初の強制通風式冷却塔を設計、施工しました。当時設計図は無く、提示されたアメリカの冷却塔のカタログの写真等を参考に大きさなどを類推し設計を進めました。
2-8 世界でも2・3例
-75℃超低温装置
昭和13年(1938年)頃から超低温装置の分野にも取り組み、数々の開発成果をあげました。昭和15年(1940年)、満州合成ゴム工業㈱より設計・施工の依頼をきっかけに、荏原製作所の協力を得て-75℃という超低温装置の開発に成功しました。当時、国内外を問わず2、3の例を数えるにすぎませんでした。
2-9 当社の本格的なクリーンルーム第1号、第一人者の地位確立
高砂層流式クリーンルーム 1号
当社として初めてクリーンルームを設計・施工。クラス100の部屋が1室、その他が3室で、クラス100の部屋については全面垂直層流、全面床吸込方式を採用しました。
2-10 当社初の超高層ビル
世界貿易センタービル
1967年、当時わが国の先駆けとなる超高層ビルで東京・港区浜松町に地上40階建(152m)の世界貿易センタービルの建設が決まり、当社はその空調設備の共同企業体の幹事会社として参画しました。当社としても、初の超高層ビル工事であり、その後、新宿の超高層ホテル、超高層ビルも施工しました。
2-11
最大級のパビリオンの
空調工事
日本万国博覧会会場(大阪)
昭和45年(1970年)、大阪で開催された日本万国博覧会で、ソ連館、カナダ館、チェコスロバキア館、イタリア館等のパビリオンの空調工事を行いました。中でもソ連館は万博会場でも最大級の建物で、地上103mの中空を起点にスキーのジャンプ台のような稜線を持つ建物で、冷凍容量にして2,000トンの空調機15系統を施工しました。
2-12 世界最大級の地域冷暖房
新宿新都心
大気汚染の防止、省エネルギー化など、時代の要請に応える地域冷暖房。この分野のパイオニアとして当社は、東京・新宿新都心に展開されたわが国で初の本格的な都市型地域冷暖房設備を担当しました。
2-13 超高層ビル時代における工事省力化の画期的な空調機開発
PMAC(ピーマック)
不況と技能不足が続く中で、建設工事、空調設備工事のプレハブ化が進み、冷熱源と温熱源とを備えたパッケージ開発に着手。施工の大幅な省力化と工期短縮に寄与し、超高層ビル時代における画期的な空調機開発となりました。
2-14 当社初の海外支店
シンガポール支店開設
プロジェクトチームを編成して海外展開を図ってきた当社は、1972年に日系企業のシンガポール支店経由で4物件を受注し、同地に駐在員を派遣しました。1974年4月には駐在員事務所とし、同年10月にはシンガポール支店としました。海外駐在事務所、海外支店設置ともに空調業界としては、第二次世界大戦後初めてでした。
2-15 日本初の全天候型多目的スタジアム。空気膜構造
東京ドーム
1988年3月、日本初の全天候型多目的スタジアム。空気膜構造による容積124万m3のドーム空間の空調設備を施工しました。
2-16 当社の氷蓄熱独自技術開発
大規模スーパーアイスシステム
(SIS®氷蓄熱システム)
液体の温度が凝固点以下でも凝固が起こらない「過冷却現象」に着目し、これを用いて連続的にシャーベットアイスを生成する新技術の開発に成功。蓄熱技術を革新し、電力負荷平準化に寄与しました。
2-17 世界最大規模のオープン型ビルディングオートメーションシステムを構築
六本木ヒルズ森タワー
当時のIT技術をベースに、世界最大規模のオープン型BA(ビルディング・オートメーションシステム)を開発し、中央監視・制御システムとして納入しました。2005年、六本木ヒルズの業績により、空気調和・衛生工学会賞技術賞を受賞。オープン型BAシステムを主テーマとした学会賞受賞は業界初。
2-18 当社の技術を世界へ
グローバル展開(マレーシア、タイ、中国、ベトナム、インド、メキシコに拠点置く)
高砂熱学グループの海外事業は、1974年にシンガポール駐在員事務所を開設して以来、40年超にわたって着実に拡大。2018年9月には、アジアを中心に10カ国で事業を展開、国境を越えて貢献領域を拡げました。
(1980年マレーシア、1984年タイ、1994年香港、2003年中国、2005年シンガポール、2007年ベトナム、2013年インドネシア、2014年メキシコ、2017年インドアイクリーン、ミャンマー)
3-1 置換換気の技術をさらに発展させた当社の空調システム
旋回流誘引型成層空調システム
SWIT®(スウィット)
暖かい空気は上に、冷たい空気は下に向かう自然原理を利用した温度成層型の空調システムです。汚れた熱気を天井に持ち上げ、作業域だけを快適で清浄な環境に保ちます。混合空調よりも少ない風量で、しかも室温に近い吹出し温度で空調できるため、省エネルギーで低コストな空調システムが構築できます。大空間や、発熱負荷、外気負荷、発塵が多い場所に最適です。2012年度省エネ大賞資源エネルギー庁長官賞受賞。
3-2
エネルギー運転を実現する
データ収集・分析ツール
GODA®(ゴォーダ)
建物の中の中央監視盤からエネルギーデータを取り込み、短時間で多角的に運用を分析し、最適な省エネルギー運転を実現するデータ収集・分析ツールです。後に、GODA®クラウドで2017年度グッドデザイン賞、省エネ大賞受賞
3-3
医療現場での
感染リスク・感染拡大の低減
医療用クリーンブース バリフロー®
医療用クリーンフード バリフード®
バリフロー®は、医療従事者の咳、くしゃみによる飛沫感染リスクを低減する「診療に用いるブース」です。医療従事者の安全と診察の作業性を両立させました。
バリフード®は、感染患者、感染の疑いのある患者を「個別に隔離するためのブース」です。点滴・透析装置への接続にも支障がないフード構造です。
3-4 省エネ空調システム
データセンター向け壁吹出し方式空調システム IDC-SFLOW®(アイディーシー・エスフロー)
空調機械室との間仕切り壁から直接サーバー室内に冷気を供給する方式(壁吹出し方式)を開発。一般的な壁吹出し方式に比べて高い省エネ性、調整が容易、良好な作業性が特徴です。
グリーンITアワード2012 審査員特別賞受賞
3-5 SIS技術を水産物の高鮮度流通事業へ活用
シャーベットアイス製氷機スーパーアイスシステム SIS-HF®
とれたてをそのままに。氷蓄熱空調システム(SIS®)の技術を応用して、水産物の高鮮度流通を実現する海水シャーベットアイス製造装置。2017年長崎県平戸市、2018年青森県八戸市に導入。2021年導入の沖縄県国頭漁協では、国内外への高鮮度流通を実現、シャーベットアイスを核とした高鮮度流通ビジネス事業確立に向けて邁進しています。
3-6
高精度環境を
省エネ・省コストと両立させた次世代型クリーンルーム
TCR-SWIT®(ティーシーアール スウィット)
今まで困難であった大規模クリーンルームの室内環境維持と省エネルギーを両立した次世代型クリーンルーム技術です。JISクラス4~5の超精密空調クリーンルームでその特性を技術的に検証し、高精度の環境維持のほか、システム全体での省エネ性、使用する空調機の省スペース化も実現。半導体(前工程含む)・電子部品など幅広い分野で導入実績を伸ばしています(計42件、延べ21万CR㎡ 2022年度末実績)。
3-7
80℃~200℃の低温排熱の
回収・利活用を実現
吸着剤蓄熱システム メガストック®
用途が少なく活用困難で多くが環境に廃棄されている200℃未満の低温排熱を高密度に蓄熱することで、熱需要との場所や時間のずれを解消して熱利用を実現し、省エネ・CO2削減に貢献するシステムです。
コージェネ大賞2021産業用部門優秀賞受賞
3-8 成長・創造・発信~地域に開かれた研究・実証施設
高砂熱学イノベーションセンター設立
「多様な人々が集い夢を育む成長の場、社内外の知識・知恵を結ぶ創造の場、高砂の技術を世界に拡げる発信の場」をテーマに茨城県つくばみらい市に高砂熱学イノベーションセンターを開設しました。当センターは、展示エリア・ホールなどの多目的エリアや執務エリアから成る「オフィス棟」と、実証・実験室・研究室から成る「ラボ棟」、ならびに、ふたつの棟を連結する形で設けられた展示スペース、プレゼンルームとで構成されています。
3-9 施工プロセスの変革
T-Base®
施工プロセスの変革に向けた「T-Base®プロジェクト」を推進しています。従来の建設現場における現場一品生産、すなわち現場ごとの「施工管理」から、標準化・プラットフォームを中心とした「生産管理」へと施工のあり方の変革を目指しています。T-Base®では、施工における省人化・省力化とともに環境負荷低減の実現、さらには、生産に携わる人の事情や特性に合わせた働き方が可能となるため、これまで 建設業に従事してこなかった多様な人財の活躍を促進し、これからも建設業界が直面する様々な課題解決への貢献を図っていきます。
4-1 脱炭素・カーボンニュートラルに貢献
水素エネルギー(マイクログリッド、カーボンニュートラル)
「2050年カーボンニュートラル宣言」によって、より一層、脱炭素社会の実現に向けて取り組みを加速させている中、再生可能エネルギーの「つくる・ためる・つかう」を『ツナグ』ことでカーボンニュートラルに資するグリーンエネルギーの創生・運営事業等の新規事業創出を目指します。
4-2 月面経済圏の構築へ挑戦
Planet6.0 月資源開発
世界初の月面着陸に挑戦する民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」のコーポレートパートナー契約を締結し、熱利用技術と水電解技術において HAKUTO-R と協業、これまでに培った技術を用いた世界初の月面環境での水素/酸素生成の実証実験に向けて、2024年月面探査ミッション時の月着陸船(ランダー)に、水の電気分解装置の搭載を目指し、将来の月面経済圏の構築に挑戦しています。
4-3 みんなで、幸せな生き方を、つくろう。
働き方改革(オフィスフリーアドレス、現場事務所の改革、魅力的な建設現場を作るための協力依頼)
時間あたりの付加価値労働生産性を向上し、柔軟で多様な働き方へワークスタイルを変革していくSmart Work(スマートワーク/略称スマワク)をキーワードとする働き方改革活動を進めています。今後も様々な働き方改革に取り組み、ステークホルダーの皆様とともによりよい魅力的な建設業界、建設現場づくりを目指していきます。
「働き方改革関連法」遵守及び健康で安全な現場労働環境づくりの取組みに向けたご理解、ご協力のお願い
4-4
基盤事業の
DX化への取り組み
DX戦略
持続可能な社会を実現するために、高砂熱学は「環境クリエイター®」として、これまで培ってきた技術力をベースにDX・GXを力強く推進し、"人にも環境にも心地よい未来"を創造していきます。
4-5 ESG(環境)への取り組み
“環境革新で、地球の未来をきりひらく。”
高砂熱学グループパーパスのもと、社員一人ひとりが環境クリエイター®として社会に貢献する、その実践が高砂熱学の目指すESG経営であります。
森林づくりを通じた環境保全活動や公益事業等もその取り組みのひとつです。
4-6 ESG(社会・ガバナンス)への取り組み
さまざまな社会課題がグローバルに顕在化する中、社員一人ひとりが生き生きと能力を最大限に発揮できる環境を、採用、人財育成、ウェルビーイング、DXという観点で、エンゲージメントの向上を目指しています。また、持続的な成長と中長期的な企業価値を高めるため、経営の適法性・透明性・迅速性を確保し、経営効率の向上を図っています。
4-7 今の社員の笑顔ギャラリー=次の100年も「人の和」
高砂熱学は、次の100年も人の和で多様性と共創の輪をひろげていく。社員みんなの笑顔とともに。
5-1
パーパス・理念体系・
新ビジョン
100周年の節目に高砂熱学グループの存在意義を見つめ直し、パーパスを定義、また、パーパスと共に「高砂熱学グループ長期ビジョン2040 Create our PLANET, Create our FUTURE」を公表しました。
社員一人ひとりが「環境クリエイター®」として、グループ全体の力を結集し、ビジネスパートナーと環境価値を共創する企業へ変革してまいります。