月と地球を
持続可能なエネルギーで
つなぐ、挑戦。

「月に水資源があるかもしれない」
そこから私たち高砂熱学は、宇宙をめざした。
もしもそれが事実なら、
月面で採取した水から水素と酸素を生成し、
人類が月で生活するための、
持続可能なエネルギー環境が
創れるかもしれない。
水素はロケットの燃料に、
酸素は人の活動に利用できる。
月を人類の生活圏に。それは、夢じゃない。
これから実現する未来だ。

高砂熱学は、「月面用水電解装置」を開発し、
世界初となる月面での水素・酸素生成へ挑戦しています。

高砂熱学は、「月面用水電解装置」を開発し、
世界初となる月面での
水素・酸素生成へ挑戦しています。

高砂熱学の挑戦

「環境クリエイター®」として、
地球から宇宙へ

私たち高砂熱学は、「環境クリエイター®」として、
100年以上にわたり人々が快適に過ごせる空間、
そして持続可能な社会の実現を目指し、
空調設備を中心に技術を磨いてきました。
その挑戦は、今、地球を飛び出し、
宇宙へと広がっています。

Section 1 私たちの月への旅路

1 なぜ、月で水素と酸素をつくるのか?

地球から全ての物資を運ぶには莫大なコストがかかります。月にある資源を活用できれば、将来の月面での生活や、月面基地を起点とした他の惑星への移動や遠い宇宙の探査が、より現実的で持続可能なものになります。これは、私たちのパーパス「環境革新で、地球の未来をきりひらく。」を、宇宙規模で実現する挑戦です。

2 宇宙への挑戦、その軌跡

私たちの月への挑戦は、突然始まったわけではありません。建物で使われる「水」や「氷」の次のエネルギーとして、約20年前から、未来のクリーンエネルギーである「水素」に注目し、地上での水素製造・利用技術の研究開発を進めてきました。この長年の経験と、空調設備で培った環境を制御する技術が、宇宙という新しい舞台への挑戦を可能にしました。
2019年12月、私たちはispace社とコーポレートパートナー契約を締結し、民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」へ参画。約4年の歳月をかけ、月という過酷な環境でも作動する「月面用水電解装置」を開発しました。

マイルストーン(年表)を見る

月面での水素・酸素生成ミッション

ランダーの着陸後、月面で水素・酸素を生成する世界初の
実証がはじまります。それを可能にする「水電解装置」とは?

真空でも伝わる高砂の“熱”
「月に人の環境を創る」宇宙への挑戦

高砂熱学の挑戦の“熱”。それは人と人をつなぎ、
宇宙へ届く。
社員のインタビューを中心に、
その“熱”をご紹介します。

Section 2 月で燃料と空気を
つくる仕組み

1 水がロケット燃料に変わる?月面用水電解装置のしくみ

「月面用水電解装置」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、基本的な仕組みは、学校で習う「水の電気分解」と同じです。水(H2O)に電気を通すと、水素(H2)と酸素(O2)という2つの気体に分かれます。
今回のミッションでは、まず装置が月面でしっかり動くかを確認するため、地球から運んだ水を使います。将来、月に存在するとされる水から水素と酸素をつくるための、第一歩です。

高砂熱学の技術が結集した月面用水電解セルのメカニズムとそれを支える構造とは?

2 過酷な月面環境にも耐える技術

月面は、地球とは全く異なる過酷な環境です。重力は地球の約6分の1しかなく、空気がないため昼夜の温度差も非常に激しく、ロケットの打ち上げや着陸時には強い振動や衝撃がかかります。
私たちの月面用水電解装置は、これらの課題を乗り越えるために、特別な工夫が凝らされています。

  • わずかな重力も
    利用する工夫

    地球の6分の1という弱い重力
    でも、水や気体がスムーズに
    流れるように設計されています。

  • 温度を
    一定に保つ技術

    真空の月面でも、装置が適切な温度で動き続けられるように、熱をコントロールする技術が使われています。

  • 衝撃に耐える
    頑丈さ

    打ち上げや着陸の激しい揺れや衝撃に耐えられる丈夫な構造を持っています。

  • 小さく、軽く

    宇宙への輸送コストを抑える
    ため、装置は縦30cm × 横45cm × 高さ20cmというコンパクトなサイズに設計されています。

3 装置の中身をのぞいてみよう

この小さな装置は、いくつかの大切な部品から成り立っています。

・電解セル(水を分解する心臓部)
電気を使って水を水素と酸素に分ける、装置の一番重要な部分です。
・水および酸素用タンク
分解する前の水と、できた酸素ガスを貯めておく容器です。
・水素用タンク
できた水素ガス(未来の燃料)を貯めておく容器です。
・電気ユニット
装置全体の動きをコントロールするコンピューター部分です。
・支持構造パーツ(頑丈な骨組み)
これらの部品をしっかり固定し、衝撃から守るフレームです。

Section 3 月面での私たちの挑戦

1 運命の日:2025年6月、月面着陸へ。
高砂熱学の技術実証

いよいよ、私たちの技術が試される時が近づいています。ispace社の月着陸船「RESILIENCE」は、2025年6月6日(金)午前4時24分頃(日本時間)に、月の「氷の海(Mare Frigoris)」と呼ばれる場所への着陸を予定しています(2025年3月時点)。月面に着陸した後、世界初の月面での水素・酸素生成に挑戦します。

2 世界初へ挑む:
月面で「つくる・ためる・くりかえす」

この挑戦で、私たちが実証したいことは3つです。

1.水素と酸素を「つくる」
世界で初めて、月面で実際に水を電気分解し、水素と酸素を安定してつくれるかを実証します。成功すれば、月での資源づくりの大きな一歩です。
2.水素と酸素を「ためる」
つくった水素と酸素を、効果的に貯蔵するために圧縮できるかを実証します。将来、月でエネルギーを有効活用するための重要な技術です。
3.運転と停止を「くりかえす」
将来、必要な時に装置を動かしたり止めたりできるように、運転開始から停止までの一連の動作を、繰り返し安定して行えるかを実証します。

3 挑戦の先にある未来

宇宙ミッションには、予期せぬことも起こり得ます。そのため、私たちは段階的な成功目標を設定しています。たとえ小さな一歩でも、月面で水素と酸素をつくることができれば、それは世界初です。
月にある資源を使ってエネルギーや空気をつくり出せれば、地球からの輸送に頼らず、より自由に、より持続的に宇宙を探査し、活動領域を広げていく未来がひらけます。
高砂熱学は、この挑戦を通じて、人類の未来に貢献したいと考えています。

さらに広がる宇宙への挑戦

高砂熱学の宇宙への挑戦は、月面での水素・酸素生成だけにとどまりません。今後、宇宙での人間の活動が活発化すれば、宇宙空間における快適な室内環境を整える必要があります。

当社は、バンダイナムコグループが進めるガンダムオープンイノベーションの公認プロジェクト“TEAM SPACE LIFE” に参画し、宇宙居住環境の創造にも取り組んでいます。2025年には、プロジェクトで開発した小型自律分散型環境センサーを打ち上げ、国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」内の空気環境を測定する実証実験にも挑戦しています。

宇宙での居住を目指した技術開発は、地上においては、社会インフラの限られる集落等でのオフグリッド型居住システムへ応用できると考えています。

  • ©東京理科大学 スペースシステム創造研究センター

    小型自律分散型環境センサー

  • ISSにおける気流とCO2濃度の
    CFDシミュレーション例