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ニュースリリース News Release

月面での水素・酸素生成への挑戦に関するご報告

プレスリリース ｜技術とサービス

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　高砂熱学工業株式会社（社長：小島和人/以下、当社）は、2019年12月、宇宙スタートアップ企業の株式会社ispace（以下、ispace）と民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」のコーポレートパートナー契約を締結し、世界初となる月面での水素・酸素生成への挑戦（以下、本ミッション）に着手しました。

　当社が開発した月面用水電解装置を載せたispaceの月着陸船（ランダー）は、2025年6月6日（金）に月面着陸を試みましたが、ispaceより、「月面着陸」の達成は困難で、HAKUTO-Rミッション2を終了したとの報告がありました。本ミッションにおいて、当社では数々の挑戦を行い、「宇宙への扉をあける」ことを実現したものと捉え、この結果をご報告いたします。

　

　月面用水電解装置は、打ち上げ後、ランダーとの定期的な通信により、ロケット打ち上げ時の大きな振動・衝撃、急激な圧力低下に耐えた後も、約5ヶ月間、宇宙空間の真空・高放射線・無重力という過酷な環境に晒されながら、着陸直前まで健全な状態であることが確認されておりました。

　

　また、本ミッションを通じ、当社は以下を得ることができました。

技術的なノウハウ
  • 水の電気分解のメカニズムに関する理解深化
  • 製品開発に関わる系統的な開発プロセス
    ⇒要求仕様を明確にし、仮説・検証を繰り返すことで、設計仕様の確定や課題解決をはかる開発プロセス
  • 性能要件の極めて高い開発を通じた技術力
  • 宇宙技術開発におけるモノづくり
プロジェクト・事業推進におけるノウハウ
  • 宇宙関連企業・機関とのネットワーク構築
  • 宇宙ビジネスの在り方
  • 新しい事業を進めるための部門横断的な組織力
  • 前例の無いプロジェクトを推進するリスクテイク、意思決定力、人財育成

　

■高砂熱学工業株式会社　代表取締役社長　小島和人　のコメント

　ispace様をはじめパートナーの皆様には、当社がファーストペンギンとして踏み出すきっかけをいただき、また私たちの水電解装置を遥か彼方まで運んでいただき、改めて御礼を申し上げます。

　

　宇宙環境といった未知の領域での実証に向けて、あらゆる想定や想像力を働かせ、五里霧中をさまよいながら、地道な確認作業を一つ一つ繰り返し、世界に１台しかない月面用の水電解装置を開発しました。空調設備分野において研鑽を重ねてきた「技術」と、開発者の誇りが体現されたものです。

　

　残念ながら、月面環境での水電解実証が結実するに至りませんでしたが、その過程で獲得した技術・知見はもちろん、世界初の実証実験に刺激を受け、熱を帯び、感動した経験、これら全てが挑戦したからこそ得られた貴重な財産です。水電解装置開発には、ispace様・産業技術総合研究所様・栗田工業様をはじめとして、産官学の垣根を超えた多くのパートナーの方々からご支援を賜りました。この場を借りて改めて御礼申し上げます。

　

　将来期待される月面エコシステムの一翼を担えるよう、今後も、環境クリエイターⓇとして新たな環境への挑戦を続けてまいります。

　

■宇宙航空研究開発機構（JAXA）　名誉教授　稲谷芳文 氏　のコメント

　月での将来の水資源利用の第一歩として開発された、世界初となる高砂熱学の水電解の実験は実行できませんでした。月面上での運用直前まで、宇宙環境で実験装置の機能が正常なことまで確認されたことは大きな成果だと思います。後は本番の実験のみと言うところで実行を断念せざるを得ないことは誠に残念ですが、この実験企画の立案から、機器の開発、打ち上げ前の検証、打ち上げ後月面までの宇宙での運用が行われ、計画通りの宇宙実験のプロセスを実践され、本番の運用開始の直前まで到達されたことは、高砂熱学の皆さんが宇宙実験を遂行する実力を獲得された、と評価されるものと確信します。次の再挑戦の機会に向けてご尽力されることを切に期待します。

　

【稲谷名誉教授 プロフィール】

国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構 名誉教授
一般社団法人 宇宙旅客輸送推進協議会 代表理事
宇宙科学研究所宇宙航行システム研究系 教授、東京大学大学院工学系研究科教授、JAXA宇宙科学研究所副所長、特別参与などを歴任。宇宙科学の世界でロケットの開発とこれを用いたミッションや将来の宇宙システムの研究などに従事され、宇宙活動をより一般化し、輸送コストを大幅に低減するための往還型輸送システムの研究活動を通じて宇宙利用の将来像について積極的な発信を行っている。

　

　

　本ミッションをご支援いただきました多くのパートナーの方々へ御礼を申し上げます。今後、得られた知見は地上の事業へフィードバックするとともに、未知の領域への歩みを止めることなく、環境クリエイターⓇとして挑戦を続けてまいります。

　

■参考資料

　

　

【高砂熱学工業株式会社について】 https://www.tte-net.com/index.html

1923年創立以来、空調設備の設計・施工を中心に、人に優しい快適空間の創出、高度に管理された生産工程環境の構築、AI を活用した設備の最適な運転や省エネのコンサルティングなど、建物ライフサイクル全般にわたってのトータルなサービスを、日本全域・中国・東南アジア・インド・メキシコで展開。パーパス「環境革新で、地球の未来をきりひらく。」のもと、「環境クリエイターⓇ」として環境創造の事業領域を拡げ、脱炭素・サステナブル社会の実現に寄与する技術・サービスの創出に取り組んでいます。