環境
研究開発
Research and
Development
研究開発に関する基本的な考え方
研究開発・事業開発推進体制
研究開発本部では、「つなぐ研究開発、つなげる事業開発」を開発方針として、「技術研究所」・「カーボンニュートラル事業開発部」・「企画管理部」の3部門で活動を行っています。
企画管理部で策定した開発戦略を元に、技術研究所が研究開発を担い、そこで生み出された当社固有の技術を活用してカーボンニュートラル事業開発部が社会実装のための事業につなげていく体制です。グループ内の各組織とさらにつながることにより、中期経営計画のKPI達成へ貢献を図ってまいります。
研究・事業開発テーマ
研究開発のテーマは、「建物の環境を創る」、「地球環境を守る」、「新たな環境に挑む」の3+αを柱とし、脱炭素社会の実現、地球環境保全、生産性向上・働き方改革、その他多様な顧客ニーズに応える技術と商品の創造に努めてきました。
具体的には再生可能エネルギー・未利用エネルギー利活用技術の開発、資源循環型利用技術の開発、高砂熱学イノベーションセンター導入技術の性能向上・検証に取り組んでいます。
特に脱炭素の推進への寄与が期待される水素エネルギー利用技術を重要開発課題と位置づけ、関連する技術の開発・事業開発を推進しています。
研究開発に関する取り組み
クローズドVOC回収システム

低沸点用の実設備第
トルエンや酢酸エチル、NMPなどに代表される揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds:VOC)は、最先端のリチウムイオン電池、全固体電池をはじめ、塗料、印刷インキ、粘着剤などの幅広い分野で使用されています。
VOCは大気中に放出されると光化学スモッグやPM2.5などの大気汚染の原因になることから、製造工程で生じる排ガスは、法規制に則り適切に処理されてきました。しかし、VOC排ガスの処理方法として主流であった燃焼方式では、VOCを完全には熱分解除去できず、一定量のVOCがそのまま大気に放出されます。さらに、VOCの熱分解により大量のCO2が発生します。これまでは、この熱分解によるCO2発生量は問題視されていませんでした。しかし、環境省の試算ではNMVOC(ノンメタンVOC)の焼却に伴うCO2排出量は約200万t-CO2/年にものぼることから、温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度において、令和6年度報告(令和5年度排出量)より、NMVOCを含む溶剤の焼却に伴うCO2の排出を、非エネルギー起源CO2の算定対象として追加されることになりました。
溶剤を取り扱う企業において、脱炭素社会の実現の観点からもVOCの非燃焼処理が喫緊の課題として捉えられています。また、大気環境保護のため、除去しきれないVOCの大気放出量を削減したいというニーズも高まっています。
そこで当社は、VOCを燃焼せずに吸着回収し、さらにVOCの大気放出量を大幅に削減する処理システムを開発しました。本システムでは、溶剤回収後の空気を溶剤乾燥炉へ循環再利用するクローズドシステムを採用することにより、VOCの大気放出量を大幅に削減できると同時に、乾燥炉給気の加熱、除湿エネルギーを削減できるため、環境性と省エネルギー性に優れています。また回収した溶剤をリサイクルすることにより、新品溶剤の製造工程で排出されるCO2の削減や資源保護に寄与します。
従来システムとの比較
- (公社)日本空気清浄協会 第38回空気清浄とコンタミネーションコントロール研究大会 会長奨励賞(2022年度)
- 国立環境研究所/日刊工業新聞社 第48回「環境賞」 優秀賞(2021年度)
- ( )内:発表・受賞年度
吸着材蓄熱システム
メガストック®
産業分野でのさらなる省エネ・CO2排出量低減のために、排熱等の未利用エネルギーの有効利用が求められています。高温排熱は発電・蒸気などでの利用が推進されていますが、100℃程度の低温排熱は用途が限定されるうえに、「熱需要」との時間的・空間的なギャップ(ずれ)から活用できず、大部分が大気中に捨てられているのが現状です。そこで、この課題を解決するために、排熱・未利用熱を空調・熱源へ再生する、新たな大規模蓄熱システムを開発し、市場展開を進めております。
本システムは、工場施設内で回収した排熱を蓄熱槽に蓄熱し、時間・場所の違う熱利用先で活用することが可能です。熱利用先は除湿・冷暖房・乾燥工程などが効果的です。さらに、地方自治体などの汚泥・ごみ焼却場排熱、工場排熱などを周辺地域で活用する、オフラインの熱回収・輸送・利用システムとしての展開も期待できます。
2018~2019年度に、(国研)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業において、東京都羽村市、ほか共同5機関とともに実証実験を実施しました。新たな高密度蓄熱材「ハスクレイ®」を活用した蓄熱システムを構築し、定置型とオフライン熱輸送型で通年の実証データを取得するとともに、工場排熱、コージェネ排気や排温水での蓄熱と、生産ラインや民生施設での熱利用を実証しました。2023年度にはTDK株式会社の国内最大規模の製造・開発拠点「本荘工場西サイト」(秋田県由利本荘市)において、生産施設で発生していた未利用低温排熱を蓄熱・再利用するため本設備が導入されました。
- (一財)コージェネレーション・エネルギー高度利用センター コージェネ大賞2021(産業用部門) 優秀賞 (2021年度)
- (一社)日本機械工業連合会 令和4年度 優秀省エネ脱炭素機器・システム表彰 会長賞(2022年度)
- (公社)空気調和・衛生工学会 第62回学会賞論文賞【学術論文部門】(2024年度)
- 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) 2020(令和2)年度 省エネルギー技術開発賞 優秀事業者賞(2020年度)
- 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) 2018(平成30)年度 戦略的省エネルギー技術革新プログラム 優良事業者表彰(2019年度)
- ( )内:発表・受賞年度
関連リンク
かがくチップス(YouTubeチャンネル)「廃熱をいつでも好きな場所で利用する! ~蒸気で熱が復活する新・蓄熱材料~」
産総研YouTube「産総研チャンネル」廃熱をいつでも好きな場所で利用する! ~蒸気で熱が復活する新・蓄熱材料~
環境負荷低減と知的生産性向上を両立した
サステナブル研究施設高砂熱学イノベーションセンター

低沸点用の実設備第
高砂熱学イノベーションセンターは、「地球環境負荷低減と知的生産性向上を両立したサスティナブル建築」を設計コンセプトとし、再生可能エネルギーの積極的活用による「ZEB」の達成やワークスタイルの変革に呼応した多様な執務空間や地域貢献の場の提供を目指してまいりました。
再生可能エネルギー利用として、太陽光発電200kWに加え、地元茨城県産の木質チップを燃料としたバイオマスガス化発電80kWを導入するとともに、受電電力量の比率を下げ、その電力も水力発電由来のグリーン電力とすることによりカーボンフリーを実現しております。また、地下水とバイオマスガス化発電の排熱を利用したデシカント外調機や天井放射空調パネル、パーソナル端末で操作できる個別空調機により、執務者の健康性や快適性を実現しております。
これらの実績が関連学協会等に評価され、複数の受賞をいたしました。本受賞に際しては、竣工2年間の実績を元にカーボンニュートラルの実現可能性を追求する施設であることが評価されました。
下記4つの主眼点に分け、ZEB実現のために徹底した省エネルギー技術と既成概念に捉われない創エネルギー技術を採用しました。室内環境では知的生産性向上を促すヒューマンセントリックな技術とシステムを積極的に採用し、従業員が実際に日常的な運用・改善を行い、迅速に研究開発にフィードバックできる環境を構築しました。また、建物を建てるだけではなく、地域や社会に発信、貢献していくことも、重要な責務と考え、平常時のエネルギー自立だけでなく、非常時でも地域に安心を提供し、地域共生しながら成長する場となることを計画し、実現しています。
建物環境性能の評価
高い環境性能を目指して計画し、省エネ性能を評価するBELSでは最高位の星★5つとNearlyZEBを、総合的な建物環境性能を表すLEED®ではGold認証を得ました。快適性・健康性を評価するCASBEE-ウェルネスオフィスではSランクの認証を得ました。
- LEED®認証ロゴは、米国グリーンビルディング協会所有の登録商標で許可を得て使用
- 米国暖房冷凍空調学会 ASHRAE Technology awards 2024 アジア地域最優秀賞(2023年度)
- (公社)空気調和・衛生工学会 第61回学会賞技術賞【建築設備部門】(2023年度)
- (一社)建築設備技術者協会 第11回カーボンニュートラル賞 「カーボンニュートラル大賞」(2023年度)
- (一社)建築設備綜合協会 第21回環境・設備デザイン賞(建築・設備統合デザイン部門) 優秀賞(2023年度)
- (一財)省エネルギーセンター 2023年度 省エネ大賞 省エネ事例部門 経済産業大臣賞(業務分野)(2023年度)
- 米国暖房冷凍空調学会 ASHRAE Technology awards 2024 世界第2位 (2023年度)
- ( )内:発表・受賞年度