ニュースリリース News Release
再生可能エネルギー利用でカーボンニュートラルを実現『高砂熱学イノベーションセンター』 世界トップレベルの環境建築を決める技術賞にて《世界第2位》獲得
プレスリリース
高砂熱学工業株式会社
株式会社三菱地所設計
「高砂熱学イノベーションセンター」オフィス棟外観。
本施設では、地域特性を生かした再生可能エネルギーを積極的に活用。地下水熱・バイオマスCHP(熱電併給/後頁参照)・太陽光発電を、大規模蓄電システムと組み合わせて高効率化を図ることで、オフィス棟では運用時の完全なCO2排出量ゼロを実現しました(発電量を加味したCO2排出量:-159t/年)。
また、地下水熱・バイオマスCHPの熱源利用によって、CO2に加えてフロンガス使用量も削減、環境負荷を最小限としています。
こうした創エネ・蓄電/放電の最適な制御により、オフグリッド化(電力の自給自足が成立している状態)を実現しました。本成果は、自然災害に対するレジリエンスの強靭化が要求される日本において、特に有用なシステムであると考えております。
■賞評価のポイント:『高砂熱学イノベーションセンター』の技術的新規性
①【新開発技術】大容量蓄電池用エネルギーマネジメントシステム
本施設では、大容量蓄電池を最適制御する新たなエネルギーマネジメントシステム(EMS)を開発・導入。敷地内での電力負荷・日射量を数日先まで予測し、太陽光発電とバイオマスCHPの予測発電量をもとに、蓄電池の蓄電/放電の最適制御を行います。これによりオフィス棟の電力オフグリッド化を実現。外部電力網に頼らない施設運用が可能となりました。
EMSを用いた本施設におけるエネルギー運用
2台設置されているバイオマス発電機
※バイオマスCHP(Combined Heat and Power=熱電併給):発電時に生じる排熱を利活用する省エネ手法。本施設のバイオマスCHPは、その一連の発電プロセス(木質チップを加熱・熱分解して高温の可燃性ガスを生成し、ガスエンジンに投入して発電に使用する)において、クーラーやエンジンの冷却で得られた排熱を、熱交換器を介して温水として施設に供給します。
②【新開発技術】冷暖房の省エネ化に有効な地下水熱を直接利用した2つの空調システム
再生可能エネルギーの積極的な利用を目指し、地下水熱による2つの空調技術を開発・導入しました。
(1)システム天井対応放射パネル
一般的に、室内で画一的に制御される天井放射パネルに対し、ここでは負荷分布に応じて細かく制御するシステムを開発。冷温水の搬送動力を削減し、パネルの表面温度に応じて送水を制御しています。
執務フロア。システム天井対応放射パネルを採用。平滑面に照明を反射させ、部屋の明るさ感の向上にも寄与する。
(2)3種のパーソナル空調機
個人の温冷感に合わせて冷暖房が可能なパーソナル空調機を開発。実運用データ(執務スペースでパーソナル空調機を利用するワーカーを対象とした温熱環境の満足度調査)からは、高い評価が確認できました。
今回開発された3種類のパーソナル空調。3種ともにスマートフォンからの操作が可能。
❶ 向かい合うデスクの間に設けられる「パーテション型」
❷ テーブル等の天板下部に設置できる「デスク型」
❸ 放射空調パネルの間に設けられている「天井設置型」
■世界規模の環境建築技術賞・ASHRAE Technology awards
「ASHRAE Technology awards」(1999年~、毎年開催)は、省エネ・快適性やユーザの健康などを兼ね備えた革新的な環境建築に対する、世界最大規模の技術賞です。審査には、設計時の性能に加えて実運用データによる裏付けが求められるため、建築・設備関係者からも高い信頼を集めています。
今回の「高砂熱学イノベーションセンター」は、世界15地域の地域代表選考(発表:23年8月)を経てアジア代表として本審査に臨み、世界最優秀賞の選定にて世界第2位を獲得いたしました。
※ 米国暖房冷凍空調学会(ASHRAE/American Society of Heating, Refrigerating and Air-Conditioning Engineers)は、132カ国・5万人以上の会員を擁する、空気調和・冷暖房に関する世界最大の国際的学会。1894年創設、本部:米国アトランタ。 https://www.ashrae.org/
左:施設全景。左にオフィス棟、右に研究室が入るラボ棟。なお、本施設では敷地全体においても水力発電由来のグリーン電力の購入によりカーボンニュートラルを実現しています。
右:オフィス棟中央の吹き抜け。
■建築概要
建物名称 | 高砂熱学イノベーションセンター | 所在地 | 茨城県つくばみらい市富士見ヶ丘 2-19 | ||
用途 | 研究施設 | 敷地面積 | 22,746.18 ㎡ | ||
建築面積 | 7,129.74 ㎡ | 延床面積 | 11,763.97 ㎡ | ||
階数 | 地上2階、塔屋1階 最高高さ:15.455m | 構造形式 | 地上S造、一部RC造 | ||
取得認証 |
CASBEE ウェルネスオフィス(2020年版):Sランク BELS:ファイブスター(5つ星)、設計一次エネルギー消費量91%削減、Nearly ZEB LEED V4 BD+C(NC):GOLD |
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計画・開発・検証・評価 | 高砂熱学工業株式会社 | ||||
設計(※1)・監理・検証・評価 | 株式会社三菱地所設計 | ||||
設計(※2)・施工 | 株式会社竹中工務店 | ||||
施工 | 株式会社関電工、株式会社ヤマト、高砂熱学工業株式会社 関信越支店 | ||||
検証・評価 | 田辺 新一(早稲田大学教授)、赤司 泰義(東京大学教授)、 鵜飼 真成(早稲田大学講師)、宮田 翔平(東京大学特任講師) |
※1:基本設計、実施設計(空調・衛生・電気) ※2:実施設計(建築・構造)