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ニュースリリース News Release

ASHRAE Technology awards 2025、世界2位 首都圏データセンターにおいて施工者・施主・運用者が一体となり省エネ設計・運用を実現

プレスリリース

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 高砂熱学工業株式会社(社長:小島和人/以下、当社)は、株式会社インターネットイニシアティブ(以下、IIJ)、AIを活用した運転制御システムの検証を担当した大岡 龍三教授(東京大学生産技術研究所)とともに、当社が施工に携わった「白井データセンターキャンパス」(千葉県白井市/以下、本施設)での取り組みについて、空気調和・冷暖房に関する世界最大の国際学会 米国暖房冷凍空調学会(ASHRAE)が開催する「ASHRAE Technology awards 2025」にて、新築産業施設およびプロセス部門(Industrial Facilities or Processes - New)における世界第2位(Second Place)の評価を受けたことをお知らせします(賞発表:2025年2月8日)。

 

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「白井データセンターキャンパス」外観

 

20250402_1_02.jpgASHRAE Winter Conference 2025での発表の様子

 

 本施設は、2019年にIIJが開設した首都圏に位置する大規模データセンターです。本取組では、データセンターにおける空調エネルギーの最少化を追求しており、温度環境と省エネルギー性を高いレベルで両立し、PUE※1=1.298 という国内トップレベルの省エネルギー性を実現しています。建物形状・空間構成の最適化、外気冷房併用の壁吹出し空調方式の採用、AIを活用した運転制御、UPS室・電気室における置換換気空調システムの採用等、当社とIIJが開発してきた技術を結集するとともに、サーバ等を含むIT機器搭載方法や気流制御等のベストプラクティスを徹底しています。デジタル社会に不可欠なデータセンターにおけるエネルギー多消費という課題に対し、最適解を示した事例として、社会のカーボンニュートラル化に大きく貢献する取組であると考えます。また、米国フロリダ州で開催されたASHRAE Winter Conference 2025(会期:2025年2月8日~14日)のジャパンセミナーでも本取組を発表いたしました。

 

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米国暖房冷凍空調学会(ASHRAE/American Society of Heating, Refrigerating and Air-Conditioning Engineers)は、132カ国・5万人以上の会員を擁する、空気調和・冷暖房に関する世界最大の国際的学会。1894年創設、本部:米国アトランタ。 https://www.ashrae.org/

   

 

■取り組みのポイント

①設備ファーストの建築計画

 建築設計段階から、空調気流の最適化を考慮した設計としています。

 サーバ棟は、建物中央にサーバ室を配置し、排気ファンを除いた空調機器と電気・制御盤類は外壁側に配置した「設備コリドー」と呼ばれるスペースに集約しています。「設備コリドー」の壁・屋根・床といった建築躯体を空調機の構造体として利用することで、スペース自体が「空調機」の役割を果たしています。空気循環ルートを広く確保し、気流循環時の抵抗を低減しています。

 

 「設備コリドー」では、サーバ室に冷気を送り込む前に、外気(外の空気)と還気(サーバ室から戻ってきた空気)を十分に混合することで、冷却前の温度ムラを解消し、冷却効率の向上を図っています。給気ファンは、高効率かつ大型なECファンを選定し、低回転で運用することで省エネとなるよう設計しています。サーバ室へ送り込まれる空気は、設備コリドーとサーバ室を間仕切る冷水コイルにより冷却されるとともに、冷水コイルとプレフィルターが気流を整える役割を果たし、均一速度・温度でサーバ室全体へ届きます。サーバで温められた空気は、自然の原理で上昇し、最も高温となる建屋頂部から排気することで、外気冷房の効率化を図っています。

 

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サーバ棟空調システム 概要図

   

②高効率な空調システムの集約
・外気冷房を併用した、壁吹き出し・置換換気空調方式の採用

 サーバ室には壁吹出し方式空調システム(IDC-SFLOW)、電気室・UPS室には旋回流誘引型成層空調システム(SWIT)を採用することにより、給気温度を24℃と通常より高い温度に設定しています。このことから熱源機(空冷チラー)からの送水温度を13~16℃と高温化することが可能になり、年間の熱源システムCOP※2は平均8.9と高効率な運転を実現しています。

 

 サーバ室とUPS・電気室には直接外気冷房を採用しています。寒冷地ではないエリアでありながら、年間の約55%は外気冷房のみで空調し、年間負荷39%を外気冷房にて処理しています。

・サーバ棟の排熱を利活用

 管理棟は、サーバ室で利用した温められた冷水を暖房に再利用するシステムとすることで、管理棟の熱源水熱量の約24%を削減しています。

  

③AIを活用した運転制御システム

 「サーバ」「空調機」「熱源機」の全体消費電力を最小化するAI活用空調制御システムを開発・導入しました。サーバ消費電力値を入力情報とするフィードフォワード制御(予測に基づいた制御)を実現し、フィードバック制御(実際の状況に基づいた制御)と比較して、理想的な運転条件を短時間で決定することができます。同様の作業を運転員が行った場合、年間約800時間かかる作業をこのシステムにより削減しています。

 

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AI活用空調制御システムの概要

  

④サーバラック周りの気流制御

 計画から運用段階まで、施工会社である当社、施主であるIIJ、そして施設を利用しているIT機器運用者らが協力することにより、ブランクパネルの設置徹底、サーバ排熱の気流改善、サーバ排気方向の統一等、通常施工会社だけでは解決できない課題を解決し、過剰冷却・過剰風量を抑え、空調効率を改善しています。

 

⑤運用結果

 2022年6月から2023年5月までの期間、空調設備のP-PUE※3は年間平均1.105、PUEは国内最高水準である年間平均1.298を達成しました(日本国内における平均PUEは1.7)。平均的なデータセンターと比較して設備消費電力を約58%削減できています。

 

※1:PUE データセンターの電力使用効率を示す指標。「施設全体の消費電力」を「IT機器(サーバ等)による消費電力」で割った数値。1.0に近いほど効率が高いと評価されます。

 

※2:COP 定められた温度条件での消費電力1kW当たりの冷房・暖房能力(kW)を示す指標。COPが高いほど1kWあたりの冷房暖房効果が高く、効率、省エネ性能が高いと評価されます。

 

※3:P-PUE データセンター全体で消費する電力のうち、IT機器で消費する分の効率を示す指標。「施設全体の空調設備における消費電力」を「IT機器(サーバ等)による消費電力」で割った数値。1.0に近いほど効率が高いと評価されます。

 

■ASHRAE Technology awardsについて

 「ASHRAE Technology awards」(1999年~、毎年開催)は、革新的な環境建築に対する世界最大規模の技術賞です。審査には、設計時の性能だけでなく、実運用データによる裏付けが求められるため、建築・設備関係者からも高い信頼を集めています。本取組は、24年8月、世界を15地域に分けた内、シンガポール・韓国・台湾等を含む「Region XⅢ」(アジア地域)における新築産業施設およびプロセス部門(Industrial Facilities or Processes - New)における最優秀賞(First Place)の評価を受けました。これにより全世界最優秀選考の地域代表に選出され、この度、世界第2位(Second Place)の評価を受けました。

 

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ASHRAE Technology awards 2025の選考プロセス

  

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表彰盾

■建築計画の概要

建物名称 白井データセンターキャンパス(白井DCC)
建築主 株式会社インターネットイニシアティブ
建物用途 データセンター、事務所
住所 千葉県白井市
敷地面積 約40,000 ㎡
工期
Phase1-1,3 2018年11月着工、2019年3月竣工
Phase1-4 2020年4月着工、2021年5月竣工
Phase1-5 2021年5月着工、2022年7月竣工
サーバ棟 延べ床面積 約4,600m2、地上1階、S造、耐震構造(一部床免振)
管理棟 延べ床面積 約1,700m2、地上2階、S造、耐震構造
最大ラック数 900ラック収容可能

 

■ 国内における『白井データセンターキャンパス』の評価について

2024年3月:第62回学会賞技術賞 建築設備部門(主催:空気調和・衛生工学会)
『白井データセンターキャンパスの全体計画と運用検証』

https://www.tte-net.com/article_source/data/news/detail/2024/688.html