Menu

低温排熱を回収・蓄熱して
利活用する技術
メガストック®

7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに

9 産業と技術革新の基盤をつくろう

11 住み続けられるまちづくりを

13 気候変動に具体的な対策を

産業分野では、さらなる省エネルギーやCO2削減のために、排熱の利活用が求められています。高温排熱(200℃以上)は発電・蒸気等での利用が推進されていますが、低温排熱(80℃~200℃)は用途が限定されるうえ、「熱需要」との時間的・空間的ギャップ(ずれ)から活用できず、大部分が大気中に排気されています。
「メガストック®」は、これまで未利用の低温排熱を吸着材「ハスクレイ」や「ゼオライト」に回収・蓄熱し、時間あるいは場所が異なる利用先で加温・除湿・乾燥等に利活用するシステムです。「定置型」として同じ事業所内で、あるいは「輸送型」として事業所外の周辺地域で、熱を利活用します。

特許 第6591857号、特許 第6761999号、
特許 第6673670号、特許 第6887543号、
特許 第7190850号、特開 2022-045730号

産業技術総合研究所 YouTubeチャンネル「かがくチップス」
廃熱を いつでも好きな場所で利用する!~蒸気で熱が復活する新・蓄熱材料~

「吸着材による蓄熱システム」
とは

本システムは、吸着材が持つ水分の吸脱着反応を利用します。蓄熱時は、高温の排熱を吸着剤に供給し、吸着剤が乾燥(水分を脱着)することで、熱を蓄えます。放熱時は、湿った空気を吸着剤に供給(水を吸着)することで、高温低湿空気を放出します。排熱の温度帯によって、ハスクレイ(80℃~120℃程度)かゼオライト(120℃以上)を選択します。

吸着材「ハスクレイ」
吸着材による蓄熱システムの原理

特徴

  • 高密度の蓄熱が可能
    従来技術(潜熱蓄熱材)と比較して2~3倍の蓄熱が可能です。
  • 熱の輸送が容易
    吸着材の熱量当たりの重量が1/2~1/3と軽量であることから、吸着材をトレーラー等で運搬することができます。蓄熱した場所とは離れた別の場所で、熱を利用することができます(熱需要との「空間的」なギャップを解消)。
  • 保管時の温度保持が不要
    水分の吸脱着を利用した蓄熱・放熱システムのため、水分が吸着しないように密閉状態を維持することで、熱ロスは発生せず、長期間の保管が可能です。蓄熱時とは別の時間帯に、熱を利用することができます(熱需要との「時間的」なギャップを解消)。
  • 加温・除湿への利用が可能
    吸着材から放出される空気は、本来は生み出すのにエネルギーが必要な高温低湿の空気です。放出された空気は、加温・乾燥・除湿に利用できます。
  • 省エネルギー、省CO2
    必要な補助動力は送風動力のみで、回収した排熱量分だけ利用側のエネルギーとCO2を削減します。

導入事例

概要

2018年7月~2020年2月、日野自動車㈱羽村工場周辺の施設及び石原産業㈱四日市工場において、(国研)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業の支援を受け、石原産業㈱、東京電力エナジーパートナー㈱、森松工業㈱、日野自動車㈱、(国研)産業技術総合研究所、東京都羽村市と協働して、本システムの実証試験を行いました。

定置型(蓄熱媒体の場所を固定して使用するシステム)

石原産業㈱四日市工場の酸化チタンを乾燥させる工程で、上流側の高温の酸化チタンから発生する熱を蓄熱材に蓄熱し、下流側の比較的低温の酸化チタンへ放熱し乾燥に利用しました。

オフライン熱輸送型(蓄熱媒体をトレーラー等で輸送するシステム)

蓄熱サイト:
日野自動車㈱羽村工場内のコージェネレーションシステムにて、蒸気を製造した後の排ガスと排温水を回収しました。蓄熱する温度は80℃から100℃程度です。
放熱サイト:
①約2km離れた羽村市スイミングセンターへ、約5.5tonのハスクレイが充填された蓄熱槽を、トレーラーで運送し、温水加温と暖房に利用しました。
②日野自動車工場内の産業空調設備へ、約2.2tonのハスクレイが充填された蓄熱槽を、工場内の小型牽引車で搬送し、空気の加温・除湿に利用しました。

主な試験結果

上記導入事例(オフライン熱輸送型)②の場合、放熱1回当たり、57%のCO2削減効果があります。

受賞・認定

  • 2018(平成30)年度NEDO戦略的省エネルギー技術革新プログラム優良事業者賞
    「80℃以上の低温廃熱を用いる革新的蓄熱材及びシステムの開発」
  • 2020(令和2)年度NEDO省エネルギー技術開発賞 優良事業者賞
    「低温廃熱利用を目的としたハスクレイ蓄熱材及び高密度蓄熱システムの開発」
  • コージェネ大賞2021産業用部門優秀賞
    「コージェネ低温排熱活用による生産設備省エネ化と高密度蓄熱システムによるオフライン熱輸送 ~日野自動車 羽村工場での改善事例~」
  • 第42回(令和4年度)優秀省エネ脱炭素機器・システム表彰 日本機械工業連合会会長賞
    「吸着材蓄熱システム(メガストック®)」

関連リンク

プレスリリース「100℃以下の廃熱を利用可能なコンパクト型高性能蓄熱システムを開発―低温廃熱を工場間でオフライン輸送する実用化検証試験を開始―」(2017年3月13日付)(503KB)

プレスリリース「100℃以下の廃熱を利用可能な蓄熱システムの本格実証試験を開始―オフライン熱輸送型と定置型での通年実証―」(2019年7月25日付)(705KB)

プレスリリース「コージェネ大賞2021 産業用部門 優秀賞を受賞 排熱活用による「工場内の更なる省エネ化」と「地域一体での熱エネルギーの面的利用」が評価」(2022年2月4日付)(561KB)