新規事業への挑戦

技術基盤を最大限に活かしながら、
新たな事業の柱となる新規領域の開拓へ

設備・施設の“生命線”を、確実に、そして効率的に維持する/エネルギーマネジメント事業

福島赤十字病院

多くの人命を預かり24時間体制で活動する病院にとって、エネルギーや水の安定的な供給は医療サービスを提供する上での“生命線”である。もし災害や事故のような事態によって供給が途絶えてしまえば、患者の命はたちどころに危機にさらされる。また、病院はエネルギーや水の大規模な需要家でもあり、経営上は、その費用を抑制することも重要な関心事となるのが常だ。こうした要請は近年、はっきりと顕在化してきている。

高砂熱学グループは、お客様が保有する建物・設備の省エネを包括的に請け負う「ESCO事業」に、従来から取り組んできていた。まず省エネを保証した上で、診断・分析を通じてそのための方策を見出し、責任を持って実行し、エネルギーコスト削減を原資としてサービスへの対価を受け取るものである。

こうしたアプローチをさらに進化させた「エネルギーマネジメント事業」では、エネルギー供給・マネジメントシステムそのものをお客様にとって最適な形で提案する。熱源設備や受変電設備は高砂熱学グループが所有する形にし、お客様の初期投資建設コストを縮減。そして、施工、運用、維持・管理を一貫して担い、さらには将来的な更新まで視野に入れたワンストップサービスにより、病院のニーズにきめ細かく応える。電力会社・ガス会社・水道局とは、当社グループが主体となって契約を結び、万一の場合にも周到に備える。その結果、お客様はコストを削減しながら、電力・ガス・冷温熱や水の安定的な供給を確保できる。また、供給設備の運転・維持管理などの医療外業務の負担を減らし、コア業務へより専念することができるようになる。

それを可能にするのが、高砂グループの技術力と設備運用ノウハウだ。お客様にとってのトータルライフサイクルコストを削減するため、エネルギー効率に直接的に影響する熱源システムには、高効率機器を使用するとともに、最適運転制御システムを導入する。エネルギーの使用状況を常時監視し、無駄を取り除いていく。さらに、エネルギー設備の稼働効率を把握し、運用実態に基づく維持管理計画を適時に見直すことで、故障防止によるエネルギーの安定供給と最適な維持管理コストを実現する。全国約1,700件の病院における施工実績を通じて蓄積した経験値を存分に活かしている。

伊勢原協同病院

神奈川県伊勢原市の「JA神奈川厚生連 伊勢原協同病院」では、「市民・組合員が安心・信頼できる病院」を理念に新病棟を移転開設。災害時に地域への水供給を可能にする設備を導入し、災害拠点病院としての機能を確保しながら、省エネ性能も向上した。高砂熱学グループの病院向けのエネルギーサービスは、これまでに2万m2以上の大規模病院において6件の実績を積み重ねてきた。

この新しいビジネスモデルを展開するにあたり、高砂熱学グループは “お客様のニーズに寄り添う”姿勢を大切にしている。例えば、病院側と定期的な会議を開き、データ解析結果を踏まえて改善策を共同で見出していく取り組みを行っている。その意図を、高砂熱学工業のグリーン・エア事業部課長の久本修司は次のように説明する。「今日の設備は技術的に高度化しており、お客様が自ら省エネや施設維持管理計画をするにはハードルが高くなっています。設備技術者の方々が高齢化し、後継者がいない組織も増えています。そうした中で、専門的なノウハウを持ち、頼りにされ、技術的な相談に乗れるパートナーとして存在価値を発揮できるよう心がけています。お客様のもとへ定期的に顔を出し、安心感を持っていただくことも大事ですが、常に新しい考え方や解決策を用意し、お客様が私たちと話をしたくなることも大切なことです。その先には、未来の技術環境のもとで、お客様との新しい関係の結び方も見えてきます」

高砂熱学グループは現在、エネルギーマネジメント事業を次の段階へと進めつつある。各地の地元企業と積極的に連携し、地域活性化に貢献する取り組みは、その一つである。そして、病院における有効性の検証を踏まえて、工場をはじめとする他の大規模需要家へもサービス対象を拡大しようとしている。エネルギー供給のあり方を大きく変えるこの事業は、ここからがいよいよ本番である。

水産業が直面する問題の解決に貢献する/SIS-HF事業

「とれたてを、そのままに」
水産物を食卓に「とれたてをそのままに」届けたいというのが、水産関係者の願いであり、その実現に挑むのが、高砂熱学工業が開発した海水シャーベットアイス製造装置(SIS-HF/Super Ice System for HIGH FRESHNESSの略)だ。

世界の食用魚介類の国別年間供給量の推移
水産庁データより抜粋

我が国は豊かな水産資源の恩恵を受けて世界でも有数の魚食文化を築いてきた。
また、世界の魚の消費は、過去半世紀で2倍以上増加し、日本の水産資源への期待も大きい一方で、気候変動等の影響と従来漁法による資源枯渇等により漁獲量の減少は大きい。これまでのような「獲れるだけ獲って送る」水産業から、「資源管理を行い、適切な温度管理によってロスなく送る」水産システムへの変革が求められている。
高砂熱学工業は、氷蓄熱空調システムで培った、水の過冷却現象(凍結温度以下まで冷却しても氷ならず、水の状態を保っている現象)を利用して生成するきめの細かい海水シャーベット状の氷によって、水産物の高鮮度流通に挑戦している。

SIS-HFで作る氷濃度の高いシャーベットアイスは、その姿を2つに変えて高鮮度流通を実現する。まず漁獲時に利用する姿は、シャーベットアイスの状態である。魚の鮮度劣化は、温度に依存するため、いかに早く魚の体温を低くするかが肝心である。漁獲直後の水産物をシャーベットアイスに浸漬すると、きめの細かい氷粒が魚の熱を直接奪い、魚体温度を急速かつ均一に冷却することが出来る。次に流通時の姿として、シャーベットアイスから水を抜いた「脱水氷」という形に変える。この効用は、海外輸送を考慮した際の、水分除去による重量減がもたらす輸送費削減と輸送中の水漏れ防止にある。シャーベットアイスによって急速冷却された鮮魚は、柔らかい脱水氷に塩釜状に包まれるため、外気温度の影響を受けにくく、最終目的地まで魚体の低温を維持した高鮮度輸送を可能にする。当社実績によれば、国内各地域の状況に合わせて、48~72時間程度の高鮮度物流を実証している。

シャーベットアイスの姿
脱水氷の姿

SIS-HFは、2017年3月に平戸魚市株式会社(長崎県平戸市)で、2018年3月にはぜんぎょれん八戸食品株式会社(青森県八戸市)で導入されている。平戸魚市様の現場からは「特に、魚体の弱いサワラやイワシなどでは、見た時の魚体の色や、エラの血色、触った時の弾力、食感などに違いがはっきりと出ている」「シャーベットアイスをそのまま投入するだけなので、作業時間は3分の1、5分の1になるのではないか」「鮮魚に鮮度という付加価値をつけることができ、生産者の手取りも増える」といった評価が寄せられている。お使いいただいている方々の創意工夫により、新しい用途も日々編み出されている。

しかし、いかに利用時のメリットがあっても、各地で直ちに使っていただけるほど甘くはない。SIS-HF事業部課長を務める藤森一真は、「我々は、水産物の鮮度維持という重要なニーズに応える一つのツールをご提案しています。しかし、この氷は魔法の氷ではありません。お客様に課題があり、その課題をソリューションするときのツールの一つにすぎません。だからこそ、製品のあらゆる側面について、関心を持ってくださる皆様に一つひとつ丁寧にお伝えし、現場の課題を解決していくために一緒に取り組んでいきたいと考えています」と、腰を据えて取り組む姿勢を強調する。
高砂熱学工業はさらに、SIS-HF事業を中長期的に発展させるため、高鮮度流通の仕組みづくりに参画。内閣府沖縄総合事務局の協力のもと、沖縄県内の商社・流通・漁協と連携して東京やシンガポールへの高鮮度物流試験を実施し、シャーベットアイスの有効性を確認した。沖縄での取り組みは、新しいうねりとなって他県にも波及しつつある。藤森は、「これからは、限りある水産資源を我々人類の発展のためにも、有効活用していく時代。ロスのない物流のコールドチェーンをしっかりと構築していくことが求められます。川上で付加価値を生み、川下に届ける仕組みを作ることが、水産業の発展に、人類の発展につながる。その実現のために、我々も力を尽くしていきたいと考えています」と抱負を語る。日本の水産業、世界の人類発展の将来を拓くという意気込みで、SIS-HFの本格事業化に取り組んでいく。