ハイブリッド型ビジネスへの挑戦

空調設備のエキスパートとして、
未来志向の新たなビジネスモデルに挑む

空調設備工事の、その先へ

高砂熱学グループは、1923年の創立以来、“空調設備の作り手”つまり設計・施工者として、数多くの建物に快適な空間を創出してきた。三越の「演芸場観客席冷房」や京都電燈の「全館ヒートポンプ冷暖房」から始まり、世界貿易センターなどの超高層ビル群、デパートをはじめとする商業施設、東京ドームや京都駅のような大空間など、そのフィールドは多岐にわたる。さらに、国産第1号のターボ冷凍機の製作を始め、「いいものがなければ自分で作る」という創業者の精神に立ち、優れた空調設備が要求する機器やシステムを自ら開発してきた。そして、一貫した取り組みの中で、技術力を磨き続け、「技術の高砂」としての矜持を持つに至っている。

そして現在、高砂熱学グループはさらに次のステージへと歩を進めている。“空調設備をつくる”技術を基盤としつつ、より広い視野から“設備がお客様にもたらす価値を最大化する”ことに事業の焦点をシフトさせようとしているのである。高砂熱学グループはこれを『工事+ソリューションのハイブリッド型ビジネス』と名付け、2017~2019年度の中期経営計画”iNnovate on 2019”の柱として推進している。

代表取締役会長兼社長の大内厚は、その狙いをこう語る。「本ビジネスモデルが目指すのは工事受注を主とするのではなく、お客様のビジネスに寄り添い、その収益力向上のために、保有施設全般の運用・管理・更新までを最適な形で支援させて頂き、その資産活用の最大化を図るものです。すなわち建築物の企画・設計段階から20年後・30年度を視野に入れた最適なビル・ライフサイクル・コストをイメージし、全体消費エネルギーやコストが最適・最小となるよう永続的なパートナーとして支援を行うものです。本ビジネスモデルの事例を増やすことで収益源を多様化し、経営基盤の強化を進めてまいります」。

脱炭素社会に向けた
設備ソリューション

2015年9月、国連サミットで「持続可能可能な開発目標(SDGs)」が採択され、同12月には国連気候変動枠組条約締約国会 議で採択されたパリ協定が定められ、世界は「脱炭素社会」つまりCO2の排出を地球環境による吸収能力とバランスさせる方向へ舵を切った。これを受けた環境省の地球温暖化対策計画では、日本のCO2総排出量を2030年度に26%削減(2013年度比)することを目標としているが、ビル施設など業務部門からのCO2排出量は1990年頃から大幅に増加しており、効果的な削減が喫緊の国家的課題となっている。

高砂熱学グループは、高性能な設備とそれを設置する建物を設計し、施工するだけでなく、その効率的な運用や保守管理も含むライフサイクル全体を支援することにより、この巨大な課題に真っ向から挑んでいる。その総称である「グリーンエアーサービス」は、クラウドベースのデータ収集・蓄積プラットフォームを中心に、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)も活用し、最適な室内環境と設備運用を追求するものである。

その重要な構成要素に、「GODAクラウド」がある。GODAはGathering Operation Data and Analysisの略で、データ収集分析ツールを指し、これをクラウド上で提供するものだ。これまでは、ビルテナントが取り組める省エネは、室温設定や電源ON・OFFといった“オモテの省エネ”が中心で、それを超えた専門的な部分は取り組みのハードルが高かった。しかし、GODAクラウドは、空調設備機器の圧力、流量、冷温水、蒸気といった運転パラメータの最適化といった“ウラの省エネ”を強力に支援する。中央監視装置の運転データを、施設のエネルギー使用量とともにクラウド上に保存し、いつでも現状と増減傾向の把握ができるようにする。直感的な操作でグラフを作成する機能も備え、現場との分析内容の共有(見える化)を容易にし、組織的な省エネ活動を後押しする。ビル(や工場)が数多くある場合には、データの一元管理を可能にするGODAクラウドは、とりわけ威力を発揮する。データに基づくエネルギーマネジメントを行う上では、お客様との契約に基づき、高度なエコチューニングスキルを有する専門スタッフが随時助言や提案を行う。エネルギー管理担当者が自信を持って使いこなせるようになるまで、高砂熱学グループの専門スタッフが継続して支援する方式も可能。お客様の負担を最小限にしながら、本格的な省エネに欠かせない機能とサポートを手軽に利用できるようにしているのが、最大の特徴だ。

2003年からPCベースのGODA、2013年以降はGODAクラウドをフル活用して省エネに取り組んできたパナソニック東京汐留ビルでは、年々着実に成果を重ね、2015年度には竣工初年度比で5割以上(51.9%)のエネルギー使用量削減を達成している。パナソニック株式会社と共同開発した「GODAクラウド/SatToolクラウド」は、2017年度グッドデザイン賞と平成29年度省エネ大賞を受賞。

GODAクラウドの開発に着手した2013年当時から従事する、国内事業統括本部FM・PM事業推進部カスタマーセンター長の寺岡慎介は、取り組みをこう振り返る。「PCベースのサービスから出発したGODAは、クラウド化することで世の中へ広めることが可能になりました。パナソニック様とは、2013年度のエコチューニングのビジネスモデル構築の取組みから、毎月、ツール改良会議を行い、パートナーとして取り組ませていただきました。その成果として受賞できたGODAクラウドには、当社グループのソリューションでありながら、社会への貢献という側面も備わってきていると感じています」。
これまでに、エコチューニングを実施した20施設において、GODAクラウドの使用により空調エネルギーは平均10%以上削減されている。この成果にも寺岡は満足していない。「まだ、ツール利用者の熟練度によって省エネ効果にバラツキが出る傾向があります」と、さらなる改善への決意を固めている。

“設備がもたらす価値”をさらに広げる

設備イメージ図(BIMモデル)

高砂熱学グループはさらに、“設備がもたらす価値”に注目することで開けるさまざまな可能性を追求している。
とりわけ、設備自体の性能を最大限に引き出すことは、高砂熱学グループが重視する視点である。独自開発した設備情報管理システム「TM MET」は、設備機器が持つ様々な情報を効率的に管理するソフトとして、機器の検索、機器情報の管理、メンテナンス情報の管理、保守管理の進捗状況の確認、故障モードの分析、最適保全周期の設定などをスムーズに行えるようにする。これによって、常に設備機器の状況や履歴をつぶさに把握でき、より長い期間にわたって良好な状態に保つことが可能になる。日常的に発生するお客様からの依頼作業を管理するツール「やる蔵くん」や、お客様からお預かりした消耗品・在庫品などの入出庫を管理するツール「くら蔵くん」とも組み合わせ、設備の保全・運用管理をトータルに最適化する「設備総合管理サービス」として提供。お客様にとって煩わしい管理の手間を最小化しながら設備資産の価値を高めるソリューションとして、広く利用いただいている。

さらには、快適で生産性を高める空間づくりを通じて、今日的な課題である働き方改革や健康経営を支援するソリューションを展開することも見据えている。高砂熱学グループの挑戦はこれからも続く。